【企業型確定拠出年金】失敗しない運営管理先の選び方とその役割

企業が掛金を拠出して従業員が個人で運用する「企業型確定拠出年金(企業型DC)」は、従業員にとっても企業にとっても税制優遇を受けられる制度として非常に人気がありますが、導入する際に運営先と管理先を選ぶ必要があります。

しかし、どのような運営先と管理先があるのか、どのような視点で運営先と管理先を選ぶべきなのかが、企業そして企業の制度担当者にとって悩ましいポイントとなるでしょう。

今回は、企業型確定拠出年金における運営先と管理先の役割や、それぞれの選び方について徹底解説していきます。

制度導入の際に、ぜひお役立てください。

企業型確定拠出年金の運営管理機関とは?

企業型確定拠出年金とは、企業が掛金を拠出して、従業員が個人で運用し、中長期間を掛けて老後の資産を形成していく仕組みの私的年金です。

この制度は、企業が自社で実施することも可能ではありますが、外部の金融機関に業務を委託するのが一般的で、その場合は、おもに銀行・生命保険会社・証券会社などの「運営管理機関」と、信託銀行や企業年金基金などの「資産管理機関」を選任し、契約をした上で導入されます。

そして、会社が拠出した掛金は、加入者となる従業員ごとに分別され、上記の機関で管理されます。

運営管理機関とは?その役割と種類

運営管理機関とは、文字通り、企業型確定拠出年金制度の運営や管理をおこなう機関のことをいいます。

この機関は、運用商品の選定・提示・情報提供・運用指図のとりまとめなどをおこなう「運用関連運営管理機関」と、加入者に関する情報の記録や保存などをおこなう「記録関連運営管理機関」の2種類にわけられます。

  •  運用関連運営管理機関

 ・加入者となる従業員が運用する商品の選定・掲示・情報提供などの運用関連業務をおこなう

  例)金融機関等が共同して設立しているものや、コンサルティング会社など

  • 記録関連運営管理機関

 ・加入者となる従業員に関する情報の記録や保存等の記録関連業務をおこなう

  例)信託銀行・企業年金基金・生命保険会社または損害保険会社など

どの機関を選ぶかによって、運用商品が異なるだけでなく、制度における規約作成のサポートをしてくれたり、導入後に大切な従業員への投資教育などをおこなってくれることもあるので、運営管理機関の選任はとても重要です。

この運営管理機関となるためには、厚生労働大臣及び内閣総理大臣の登録が必要となります。

また、運営管理機関の一覧は、厚生労働省のサイトで確認することができます。

厚生労働省「運営管理機関登録業者一覧」
(2024年9月11日現在222社)

■資産管理機関の役割とは?

資産管理機関は、企業型確定拠出年金制度の加入者となる従業員の資産管理をおこなう機関のことをいいます。

企業は、加入者となる従業員ひとりひとりに拠出した掛金を資産管理機関に入金し、さらに資産管理機関は自社の資産と分別して管理します。

こうすることにより、企業から資産を分別することとなり、万が一資産管理機関となる金融機関などが破綻した場合も資産を保全することに繋がります。

また、資産管理機関は、加入者が運営管理機関でとりまとめた「運用指図」という、運用商品選択・購入割合の決定・売買をおこなったり、年金や一時金の給付もおこないます。

このとき、個々人の運用の内容は個人情報として保護されるため、企業には知らされることはありません。

企業は、従業員の年金資産を企業とは分別して管理する必要があるため、資産管理機関との契約は必須となります。

企業型確定拠出年金における運営管理機関の選び方

企業型確定拠出年金制度を導入する際は、制度や金融商品の知識と情報の収集や、加入者となる従業員への説明や情報提供などをどのようにおこない、管理していくかが非常に重要なポイントとなります。

さらに、従業員からの質問や、加入や脱退がある場合には、迅速に対応しなくてはなりません。

こうした運営管理業務は、専門知識が必要となり、常に最新の情報を揃えておくことが必須となるため、多くの企業が運営管理機関や資産管理機関に運営にかかわる業務を委託しています。

企業は、従業員にとってメリットのある、専門性の高い運営管理機関を複数評価し、選定するようにしましょう。

運営管理機関を選任するポイントと手続き

企業が運営管理機関を専任する際は、まず、従業員の立場で利益が生じるかを考えたうえで、複数の運営管理機関を適正に評価し、委託する運営管理機関を選定する忠実義務があります。

運営管理機関を選任する場合には、以下を選定のポイントとします。

【運営管理機関選任の評価項目】

  • 知識や情報量などの専門的能力の水準
  • 業務・サービス内容
  • 商品の運用方法
  • 手数料の金額 など

上記のような評価項目について、従業員の利益を念頭に検討し、制度の規約に選任した理由を記載します。そして、労使の合意のもと、厚生労働大臣の承認を得て運営管理機関の決定となります。

このとき、複数の企業がひとつの規約を利用して企業型確定拠出年金を導入し、同一の運営管理機関に委託することも可能です。

また、すでに複数の企業により共同実施されている企業型確定拠出年金に、後から別の企業が参加することも可能ですが、その場合は、すでに取り決められている規約や選定されている機関(運営管理機関や資産管理機関)を前提にその規約に参加することとなるため、選任と選任理由が不要となり、制度を実施するということを労使合意する形となります。

企業は、運営管理機関がおこなう運営管理業務を適正に評価し、その内容を加入者などに開示することが望ましいとされています。

この評価は、平成30年5月より5年以内ごとにおこなうことが努力義務とされ、少なくとも下記の項目でおこなわれ、必要に応じて運営管理機関を変更する場合もあります。

また、1~4の項目については、運用管理機関の選任時における提示運用商品についての評価項目としても定められています。

【運営管理機関への運営管理業務評価項目】

  1. 提示された商品群の全て又は多くが1金融グループに属する商品提供機関又は運用会社のものであった場合、それがもっぱら加入者等の利益のみを考慮したものであるといえるか。
  1. 下記(ア)~(ウ)のとおり、他の同種の商品よりも劣っている場合に、それがもっぱら加入者等の利益のみを考慮したものであるといえるか。

(ア) 同種(例えば同一投資対象・同一投資手法)の他の商品と比較し、明らかに運用成績が劣る投資信託である。

(イ) 他の金融機関が提供する元本確保型商品と比べ提示された利回りや安全性が明らかに低い元本確保型商品である。

(ウ) 同種(例えば同一投資対象・同一投資手法)の他の商品と比較して、手数料や解約時の条件が良くない商品である。

  1. 商品ラインナップの商品の手数料について、詳細が開示されていない場合又は開示されているが加入者にとって閲覧性がない若しくは詳細な内容の閲覧が分かりにくくなっている場合に、なぜそのような内容になっているか。
  1. 確定拠出年金運営管理機関が事業主からの商品追加や除外の依頼を拒否する場合、それがもっぱら加入者等の利益のみを考慮したものであるか。
  1. 確定拠出年金運営管理機関による運用の方法のモニタリングの内容(商品や運用会社の評価基準を含む。)、またその報告があったか。
  1. 加入者等への情報提供がわかりやすく行われているか(例えば、コールセンターや加入者ウェブの運営状況)。

参考:厚生労働省「兼務規制の緩和、運営管理機関の評価関係」
事業主による運営管理機関の評価について(2018年7月24日施行) 具体的な評価項目より

従業員の資産形成に影響する運営管理機関選びは慎重に

企業が企業型確定拠出年金制度を適切に運営するためには、専門的な知識と最新の情報が必要です。

今回取り上げた企業型確定拠出年金の運営管理機関は、そのどちらも持ち合わせた企業型確定拠出年金制度運営のプロであり、銀行や生命保険会社など、多くの金融機関などが運営管理業務の委託を受け付けています。

数ある運営管理機関からどの機関を選ぶかは、多くの企業が頭を悩ませる部分ではありますが、まずは従業員の利益を第一に考え、企業として適正に評価し、判断することが重要です。

その際の評価ポイントは、少なくとも厚生労働省が提示している【運営管理機関への運営管理業務評価項目】を活用し、複数の運用管理機関を比較して検討するようにしてください。

運用管理機関は、どこを選んでも似たような商品を似たような方法で運用すると思われがちですが、運用管理機関によって選べる商品・運用にかかる手数料・導入後のサポートなど、サービスはさまざまです。

そして、選んだ商品の運用方法によって従業員の将来のための資産がどのように用意できるかが変わってくるため、運営管理機関選びは非常に大切なプロセスなります。

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