企業型確定拠出年金制度を導入する企業が増加する背景とは?各種年金制度の仕組み
企業の福利厚生や経営戦略の中で、急速に注目を集めているのが「企業型確定拠出年金(企業型DC)」です。近年、その導入企業が増加している背景には、公的年金制度の変動や経済の動向だけでなく、企業と従業員の双方にとって多くのメリットが存在することが挙げられます。この記事では、企業型確定拠出年金制度の導入がなぜ増えているのか、その主な理由とその影響をわかりやすく解説します。ぜひ企業型確定拠出年金を導入する際の資料としてお役立てください。
日本の年金制度とは?「公的年金」と「私的年金」の違い
日本の年金制度は、国民が老後の生活資金を確保するためのシステムです。
年金には「公的年金」と「私的年金」の二つの種類があります。「公的年金」は加入が義務とされ、「国民年金」と「厚生年金」の2種類があり、働く環境によっていずれかに加入します。
「国民年金」は、国が提供するもので、全ての国民が対象となる制度です。
「厚生年金」は、会社に所属する従業員とその家族を対象とした制度です。
それに対して、任意で加入する「私的年金」は、主に企業や金融機関が提供するものです。
公的年金の上乗せ給付を目的とし、国民年金基金、確定給付年金、確定拠出年金、個人年金保険などが挙げられます。
高まる企業型確定拠出年金(企業型DC)への関心
近年、公的年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられ、65歳からの支給開始となりました。将来的に、支給開始年齢がさらに引き上げられる可能性もあるのではという意見も見受けられます。
これは、日本の少子高齢化が進行する中で、公的年金制度だけでは将来の老後生活を十分にサポートできないという懸念が関係していると言えます。このような社会状況で注目を集めているのが企業型確定拠出年金(企業型DC)です。これまではあらかじめ給付額が確定している「厚生年金」や「確定給付企業年金」が主流だったのに対し、運用成績次第で受け取る年金受給額を増やすこともできるのが大きな魅力と言えるでしょう。
運用益が変動する点では運用に注意が必要ですが、従業員は月々の給与からの拠出金が給与としてはみなされず、企業側にとっては、変動する社会情勢の影響を受けにくいなど、企業型DCには、企業と従業員双方に税制上のメリットが存在します。
企業型確定拠出年金制度を導入する企業が増加中
近年、企業型確定拠出年金制度を導入する企業が増えています。その理由とメリットをそれぞれ見ていきましょう。
・公的年金の支給開始年齢の引き上げ
公的年金の支給開始年齢の引き上げが進行中であることから、老後の資産形成への不安が高まっています。自分で蓄え、備えることで、老後を安心して迎えることができます。
・社会保険料がかからない
掛金に社会保険料が課されないため、経済的な負担が軽減されます。※給与や掛金の額によって、社会保険料の負担軽減メリットを受けられないこともあります。
・掛金を全額損金算入することができる
企業は掛金を全額損金算入することができるので、税務上のメリットが得られます。
・従業員の退職時に発生する企業の負担減
従来の退職給付制度に比べ、企業型確定拠出年金制度を導入することで一度の大きな資金流出を避けることができ、企業のキャッシュフローの安定が図れます。退職給付債務が発生しないということは、企業の財務健全性を維持する上でも有効です。
ルール改正のたびに確認を
近年、企業型確定拠出年金制度は改正がなされています。加入可能年齢の拡大(2022年5月より、厚生年金被保険者(70歳未満)であれば、加入が可能※)や、iDeCo加入の要件が緩和(2022年10月より、会社の拠出が拠出限度額に満たない場合はiDeCoへの加入が可能)が行われるなどの改正がありました。※加入が可能な年齢は、各企業の規約・規定により異なります。
今後も制度改正の可能性は大いにあるので、導入した企業、導入を検討している企業は都度確認することをおすすめします。
企業にも従業員にもメリットがある企業型DCの活用を
少子高齢化社会や、働く期間が以前より長くなっていることなど、将来への不安は大きな問題となっています。このような背景が後押しとなり、企業型確定拠出年金制度の導入を選択する企業が増えてきています。従業員においても、不足する老後の資金を企業年金や個人の貯蓄を活用してより効率的に蓄えていきたいという考えとマッチした方法として、企業型確定拠出年金への関心が高まっているのです。
とはいえ、企業型確定拠出年金制度の導入には、資金計画や制度運営、さらには従業員への投資教育といった多くの施策の実施が求められます。また、この制度を取り入れる際、従業員に不利益や支障が生じないかどうかの検証も欠かせません。さらに、企業型確定拠出年金制度は、今後も改正が予定されているため、導入企業は都度その変更点を確認し、適切な対応を取る必要があることを念頭に置いて導入を検討しましょう。