企業型確定拠出年金を導入する際の相談先とは?選択のポイントも

企業型確定拠出年金(企業型DC)は、従業員の将来の生活を支える大切な制度であり、企業にとっても節税効果や経営のメリットがあるため、注目が高まっています。

しかし、制度の導入や運営・管理には専門知識が必要であり、「難しそう」「従業員への説明が大変そう」と感じる企業も多いのではないでしょうか。

実際に導入している企業の多くは、「専門的な知識を持つ企業や専門家」に相談しながら進めています。

この記事では、企業型DCの導入を検討する際に相談できる専門家や企業の種類、相談先の選び方についてわかりやすく解説します。

制度導入は「専門的な知識」や「最新の情報」が必要

企業型確定拠出年金制度の導入には、専門的な知識や最新の情報が欠かせません。

制度の仕組みや運用の流れを理解し、会社の状況に合った形で導入するには、経営者や担当者だけで進めるのは難しい場合があります。

また、加入する従業員への投資教育や、運用をサポートし続ける体制も必要です。こうした業務を通常の業務と並行して行うのは、負担が大きくなります。

そこで、多くの企業は、専門知識や経験を持つ専門家に相談しながら導入を進めています。

企業型確定拠出年金について「誰に相談するのか」が重要

企業型確定拠出年金制度の導入や検討に際して、「誰に相談したら良いのかがわからない」「どうやって相談する相手を決定したら良いのかがわからない」と悩まれている経営者もしくは企業における制度担当者も多くいらっしゃると思います。

実際に、企業型確定拠出年金制度の導入を誰に相談するのかは、非常に重要なポイントです。

なぜならば、この制度は従業員にとって福利厚生の一部であり、また、従業員の将来のライフプランに大きく関わる長期間の資産運用となるため、途中で簡単に変更や廃止はできません。

そのため、制度を導入する前には、自社と従業員にとっての企業型確定拠出年金の必要性や、経営方針や予算との相性だけでなく、導入後の運用・管理・従業員への教育サポートなどの内容を熟考し、シミュレーションをおこない、自社の実際にかかるコストや想定されるリスクなども把握し、慎重に導入決定を判断する必要があります。

今、この文章をご覧いただいているように、インターネットなどで調べて自分の知識を高めて情報を増やしていくことももちろん大切ですが、前述した問題点をクリアにして、安心して企業型確定拠出年金を導入・運用・管理していくためには、やはり専門的な知識と最新の情報に加えて「自社と自社の従業員にあっているか」という観点も必要となるため、信頼できる専門家に相談することをおすすめします。

企業型確定拠出年金制度についての相談先としては、以下があげられます。


企業型確定拠出年金制度の相談先の例

【金融機関】

  • 銀行
  • 保険会社
  • 証券会社

など

【お金に関する国家資格を持つ人】

  • 税理士
  • 社会保険労務士
  • FP(ファイナンシャルプランナー)

など

【その他の専門家や専門的サービス】

  • DCプランナー
  • 退職給付コンサルティング

など

企業型確定拠出年金制度を導入する支援やサポートをおこなっている企業や機関は数多くありますが、その支援内容やサポートの範囲はそれぞれ異なります。

そのため、相談前にはそれぞれの内容を比較し、検討することが大切です。

相談先を選ぶ際に、気をつけるポイント

企業型確定拠出年金は、導入する際に、会社における現行の退職金制度や資金計画を考慮した上で、規約を制定し、導入後どのように運営していくのか、従業員への投資教育の方法など、様々な内容を取り決めます。

そしてそれを基に、運用・管理・従業員へ対しての投資教育を継続しておこなっていかなければなりません。

そこで頼りになるのが、先述した企業型確定拠出年金制度の相談先になりますが、企業や機関によっては、取り扱うサポート内容が異なり、希望している支援が受けられない場合も考えられますので、事前に確認し、自社の体制に合う相談先を選ぶようにしましょう。

以下の項目をチェックポイントとして参考にしてみてください。

導入前のサポート

企業型確定拠出年金制度の相談先を選択する際に、以下の3点が解決されるかを判断基準にすることもできます。

1.説明・相談・ヒアリングなど

まずは、企業型確定拠出年金とはどういうものか、導入に際しての条件などがあるか、制度を導入することによって自社にどのようなメリットがあるのかなどをしっかりと説明してもらえるか、その時に発生した疑問点に関してしっかりと答えてもらえるかが大切です。

さらに、メリットだけでなく、想定される費用やデメリットも、できるだけ具体的な数字や事例で提示してもらえると良いでしょう。

そして、企業型確定拠出年金は企業にとっても従業員にとっても継続的に関わっていくものとなるので、双方に寄り添った内容であることが大切です。

そのため、事業内容や現行制度の問題点などをヒアリングしてくれるのか、「なぜ企業型確定拠出年金を導入したいのか」などの会社としての目的や方針を理解してサポートしてもらえるかを見極めましょう。

2.制度設計・プランニング・シミュレーションなど

企業型確定拠出年金制度を導入する前に、どのような制度を設計するか、プランニングしたり、シミュレーションすることはとても大切です。

できれば、企業や従業員の状況に合わせた制度設計やプランニングができることが望ましいですが、相談先となる会社や金融機関などによっては、設計やプランの形が決まっていて、希望にそぐわない場合もあります。

企業型確定拠出年金制度の導入が負担になったり、希望と違う内容にならないように、導入目的や事業の状況などに応じて、自由に設計やプランニングができるところがおすすめです。

そして、設計やプランニングを基にしたシミュレーションをきちんと提示してもらえるか、企業と従業員双方のメリットだけでなく、デメリットやリスクなども提示してもらえるかも確認しましょう。

3.必要書類・就労規則・規約などの作成や添削、登録手続きなど

企業型確定拠出年金制度の導入と開始には、専門知識が必要となる規約や書類を作成し、厚生局への認可承認や運営管理機関への加入者登録などが必要となります。

このような専門的な登録手続きを代行してもらえるかどうかも、相談先を選択するポイントのひとつにするのも良いでしょう。

また、企業型確定拠出年金制度を導入すると、多くの場合、現行の就業規則・給与規程・退職金規程などに変更が生じます。

新制度と旧制度の整合性や従業員に不利益が生じていないかなどを確認したり、場合によっては従業員への説明や労働組合との交渉なども必要となります。

このような工程や作業を請け負ってくれる相談先もあるので、希望する場合は、対応してくれるかどうかを選択のポイントにすることもおすすめです。

導入後のサポート

企業型確定拠出年金制度の相談先の中には、導入前から導入までのサポートはおこなっていても、導入後のサポートはおこなっていないところもあります。

この制度は、導入してからがスタートとなり、長期的な継続が必要となるので、できれば導入前の相談から導入後のサポートが一貫してできる相談先をおすすめします。

従業員への継続的な投資教育

先述しましたが、企業型確定拠出年金制度は、導入してからが本格的なスタートとなります。

そしてゴールは、10年〜数十年後、従業員が積み立てた年金資産を受け取るタイミングとなり、受け取る金額は従業員個々人の運用次第で結果が異なるため、導入後の運営と従業員の資産運用が非常に重要です。

そのためには、企業の制度を整える一環として、従業員への継続的な投資教育が欠かせません。

企業型確定拠出年金制度への理解や知識だけでなく、取り扱われる金融商品に対しての知識も必要となるので、従業員への継続的な投資教育のサポートや支援がしっかりとおこなわれるかどうかを確認してから相談先を選ぶようにしましょう。

また、従業員によって、年金や投資の知識は異なりますので、それぞれのレベルに合わせた教育をおこなってくれる会社や機関もおすすめです。

規約の改定や手続きなど

企業型確定拠出年金制度を導入し、従業員が加入した後にも、状況に応じて規約などに変更が生じる場合があり、書類の作成や手続きが必要となることもあります。

こういった導入後の制度内容変更に伴う書類の作成・手続き・従業員や労働組合への説明や交渉なども非常に時間と手間がかかるので、対応してくれる相談先を選べるように、事前に確認しておくと良いでしょう。

制度の導入や管理は、専門のサポートを受けて

企業型確定拠出年金制度は、企業にとっても従業員にとっても継続的におこなうものですので、どちらにもできるだけ不利益や負担がないものにできるのが理想です。

しかし、この制度は導入前後において専門知識が必要となり、企業の経営者や制度の担当者がすべてを網羅し継続して運用していくのは非常に手間・時間・労力がかかるでしょう。

そのため、多くの企業では適切に導入・運用・管理をするために、金融機関やお金の専門知識を持つ専門家に相談しています。

この相談先にも様々なタイプがありますが、できれば導入前のサポートのみではなく、導入後の従業員への投資教育を継続的におこなってくれたり、制度に関して変更が生じ、必要な手続きなどが発生した場合などにも一貫して対応してくれるところがおすすめです。

また、企業型確定拠出年金は、制度の導入を決定してもすぐにはじめられるものではありません。

制度を導入するためには、制度のための規約を作成したり、現行の退職金制度との関わりなどを従業員へ説明して承認してもらったり、地方厚生局への承認申請などが必要となるため、事前準備に半年もしくはそれ以上の時間がかかります。 

さらに、企業と、制度に加入予定の従業員に寄り添った内容にするとなると、より時間や手間がかかるでしょう。

しかし、大切な従業員の将来の生活を支える資産に関わることですので、導入から運営までしっかりとおこなえるように、相談先の選択にも注力してみてください。

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