企業型確定拠出年金の加入対象者とは?加入資格を定めるルールと注意事項を確認!
近年、多くの企業で、従来の退職金制度や確定給付企業年金にかわり、企業型確定拠出年金(企業型DC)を採用する動きが活発化しています。制度を導入する上で、従業員の加入資格の確認は欠かせません。従業員間での差別感や不公平感が生じないよう配慮することが大切です。税制優遇などの多くのメリットを活かすためにも、しっかりとした導入前の準備が必要となります。
加入対象者は?
企業型確定拠出年金(企業型DC)の導入に際して、最初に明確にすべき点は、どの従業員がこの制度の加入対象となるかという点です。
基本的に、企業の従業員のうち厚生年金の被保険者である方が対象とされています。また、対象年齢は原則60歳未満ですが、特定の条件下では60歳以上70歳未満の方も含まれることがあります。加入対象者は企業の規約等に定める必要があります。
・企業の従業員であること
・厚生年金の被保険者であること
・原則60歳未満、一定の場合60歳以上70歳未満の人も対象となる
加入資格を設けるには?一定のルールを守ろう
企業型確定拠出年金は、加入資格や対象者の範囲を規約で明確にする必要があります。その際は、法令に定められたルールに従いましょう。このルールを守ることにより、企業は独自の判断で加入対象者を選んでも、差別的な扱いが生じるのを避けることができます。具体的にどのようなものがあるか見ていきましょう。
1.一定の職種
企業は、一定の職種の従業員のみを加入対象者として規定することが認められています。ただし、該当する職種の従業員の労働条件や就業規則が他の職種とは異なっていることが必要条件となります。
(職種とは、事務職、営業職、開発職などのことを指します)
2.一定の勤続期間
企業は特定の勤続期間を満たす従業員のみを加入対象者として規定することが認められています。この場合、加入条件となる勤続期間を詳細に明示します。
(例:「勤続◯年を経過した者を加入者とする」など)
仮に、加入要件が入社5年の場合、入社した時点から5年間が経過するまでは、企業型確定拠出年金の掛金と同等額を代替給付として設定する必要があります。
この場合、一般的に前払いの退職金制度として給料や一時金に同等の給付を加算することが一般的です。
3.一定の年齢
企業型DCはほとんどの場合が長期の資産運用を前提とするため、一定の年齢を超えた従業員の加入を制限することが認められています。
これは、高齢の従業員に対して十分な運用成果を期待できない場合があるためです。この場合、「50歳以上」を加入対象外とし、他の形で保証をするような取扱いが認められています。
しかし、近年における定年の延長や確定拠出年金の加入資格緩和などの動きも視野に入れ、どの年齢層を対象外とするかは慎重な検討が求められます。
・年齢要件が緩和!70歳未満まで加入可能に
2022年5月より企業型確定拠出年金の加入資格に関する年齢要件が緩和されました。
これにより、70歳未満の従業員もこの制度に加入することができるようになり、この変更に伴い、年金の受給を開始できる年齢の上限も75歳までに延長されました。
より多くの従業員が制度を利用できるように、企業の制度に柔軟に取り入れていくことも効果的でしょう。
4.希望者(従業員が選択できる)
企業型確定拠出年金の加入の有無を、従業員に委ねることも認められています。
この制度の仕組み上、60歳前の中途退職者でも、原則一時金として受け取ることができません。
このような背景から、加入の選択を従業員の意思に委ねることも一部の企業で採用されています。
・自由に組み合わせることも可能!
企業は、上記で紹介したルールを自由に組み合わせて規約を定めることが認められています。制限を設けないことも可能です。
制限を設ける場合は、企業の具体的な状況や実態を考慮した規約づくりが不可欠となります。もちろん、企業が単独で規約・規定を決めるのではなく、労使間の合意を基にして、さらに厚生労働大臣の承認を得る必要があります。
承認を得た後は、その内容を従業員にきちんと伝達し、周知することが必須です。
加入資格の範囲を限定した場合、対象外の従業員への代替措置や待遇などについても、十分に検討と調整をしましょう。
・企業型DCとiDeCoの加入要件が緩和!
企業型確定拠出年金に加入している方のiDeCo加入は、労使間の合意や事業主掛金上限を引き下げた場合など、いくつかの制限のもとで認められていましたが、2022年10月より要件を満たさない場合でも加入が可能となりました。
次に、ルール作りのもととなる労使間の合意に関して説明します。
労使の合意とは?
労使とは、「労働者」と「使用者」のことを言い、労使間の合意とは、従業員と企業側の合意を意味します。
企業型確定拠出年金の制度を設けるためには、加入資格を規定するだけでなく、規約を定めるにも労使間の合意が必要となります。
労使間の合意事項や説明事項を確認しておきましょう。
労使の合意・従業員への説明が必要な内容
- 加入資格の規定について
- 掛金の設定(想定利回りなど)について
- 給付について
- マッチング拠出について
- 投資教育の内容について
- 運用商品のラインナップについて
- 離職者の取り扱いについて
- 従業員の費用負担(手数料等)について
- 他制度からの資産の移換について
企業型確定拠出年金では、加入者の範囲を設定する際、多様な条件を組み合わせることが可能です。
2022年から、加入条件や年齢要件が段階的に緩和されています。
これにより、より多くの人々が利用できるようになっていくでしょう。
企業においても、どの範囲の従業員に加入資格を提供するのか、そしてどのようにその制度を運営していくのか、ぜひこのタイミングで見直してみてください。
ただし、制度の導入や見直しをする際には、労使の合意が不可欠となります。その際、重要事項や説明事項の確認は欠かせません。
企業にとっても従業員にとっても大切な制度の運営を最適化するために、専門家への相談も検討してみてくださいね。